扉
未来医療技術と倫理
寺尾 榮夫
1,2
1前東邦大学脳神経科外科
2西横浜国際総合病院
pp.99-100
発行日 1998年2月10日
Published Date 1998/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901522
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政治の倫理,企業の倫理,医の倫理と最近倫理がしきりに話題になるのは反倫理的人間が多くなったせいだろうか.いや医の倫理に関する限り,倫理感の欠如した医師が急激に増えているのではない.医学,生物学の進歩の結果登場してきた最先端の診断や治療技術をそのまま実際に適用してよいものかどうか従来の常識と倫理規範では簡単に判断できかねるようなことが多くなってきたのである.現在全国80の医科大学や大病院では学内,院内倫理委員会がもうけられており,新しい技術,治療法が医療の現場に導入されるときにはこの委員会でその適否が検討されている.しかし,一施設での限られた人材での検討では当然能力に限界があり討論される内容は新治療法の導入,人体材料を用いる研究が患者に不利益をあたえないか?危険はないか?説明は十分か?など技術的な面の検討が主になってしまう.脳死を人の死と認めるべきか?などより高度な問題の検討は到底一大学では結論は出し得ない.そこで医学部,医科大学倫理委員会連絡懇談会という全国規模の会が年2回の割で開催され,全国各大学の倫理委員会のメンバーが集まり医学倫理問題が討議されている.脳死の問題があるためか脳神経外科医が倫理委員会のメンバーに選出されることが多く,この懇談会でも多くの脳神経外科の先生方にお会いできた.
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