Japanese
English
綜説
肺真菌症—診断と治療の現状
Pulmollary Mycosis:diagnosis and treatment
網谷 良一
1
,
西坂 泰夫
1
Ryoichi Amitani
1
,
Yasuo Nishizaka
1
1大阪赤十字病院呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Osaka Red Cross Hospital
pp.1021-1027
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902547
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はじめに
アスペルギルス症やクリプトコッカス症をはじめとする肺真菌症については今日なお早期診断や治療に難渋することが少なくない.早期診断が必ずしも容易でない理由としては,一部の特徴的な症例を除いて臨床症状や画像所見が甚だ多彩であること,喀痰検査などの非侵襲的方法による菌学的検査の検出感度が低いこと,近年種々の方法が開発されている血清診断法についても菌種によってはまだまだ感度・特異度とも十分とはいえないことなどが挙げられる.
治療については,従来から使用されているam—photericinBに加えて種々のアゾール系薬剤が相次いで臨床に導入されるなど新たな抗真菌薬開発の努力が続けられている.それでもなお使用可能な抗真菌薬の種類が限られているうえに抗菌活性も必ずしも満足のいくものではないため,アスペルギルス症やムーコル症などについては,たとえ診断がついてもその後の治療に難渋する例が少なくない.
肺真菌症の診療上の近年の進歩の主なものとしては,1)主要真菌に関する抗原検出系を中心とする血清診断法の開発,2)新たな抗真菌薬の研究開発,3)肺真菌症,特に気管支肺アスペルギルス症の病態・病型の理解の深化,4)新たに認知されてきた肺真菌症などが挙げられる.これらのさらなる進歩によって肺真菌症の早期診断と治療効果の改善が期待される.
一言で肺真菌症といっても原因真菌の種類(表1)によって病態も臨床像も甚だ多様であり,診断・治療の方法も自ずと異なる.本稿では肺真菌症全般の疫学・診断・治療などの現況を概説しながら,主要な肺真菌症については適宜説明を加えたい.
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