巻頭言
「呼吸と循環」境界領域の研究の勧め
西村 正治
1
1北海道大学大学院医学研究科呼吸器病態内科学分野
pp.971
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902540
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本誌は「呼吸と循環」の名前通り,呼吸器と循環器のテーマを順に取り上げ特集を組まれることが多い.その内容について筆者になんら不満はない.多くの場合,それぞれの論文は力作・秀作が多く,読みごたえのあるものが多い.しかし,この雑誌は何故「呼吸と循環」というタイトルで発行されているのだろうか?それぞれの特集を呼吸器あるいは循環器に興味をもつ医師が関心をもって読んでいたとしても,呼吸器疾患の特集を循環器専門医師が読み,循環器疾患の特集を呼吸器専門医が読んでいるだろうか? これが,本誌の巻頭言を依頼されたときに私の脳裏に最初に浮かんだ思いである.
肺と心臓は隣り合っており,医学部の講義で学ぶように呼吸と循環は密接に関連しあっている.いわゆるClassical Physiology やOrgan Physi—ologyの研究が華やかだった頃には,この両者の関連は大きな研究テーマでもあった.呼吸運動に基づく胸腔内圧の変動や慢性肺疾患によって心機能にどのような影響を与えるか,あるいは逆に左心不全によって肺のコンプライアンスやガス交換がどう変化するか,また,人工呼吸管理をすれば肺の生理ばかりではなく循環系の知識もなければ,正しい酸素投与の基準や人工換気基準を論ずることはできなかったのである.
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