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肺真菌症とは
三上 理一郎
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1東大中尾内科
pp.239
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200280
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- 文献概要
肺感染を来たす真菌としてアスペルギルス,クリプトコックス,カンジダ,ヒストプラスマなど約13種が知られ,本症は近年増加し注目されてきた。増加の原因として,広域性抗生物質の長期治療後の交代菌現象,副腎皮質ホルモン使用による炎症反応の低下,および種々の治療により難治疾患の患者の経過が延長し,全身抵抗力が低下し真菌症の罹患しやすい病態の患者が増加していることなどがあげられている。わが国では特に肺アスペルギルス症の頻度が多くなっている。原発性の他に続発性として呼吸器疾患(気管支拡張,浄化空洞,気管支胸腔瘻,気管支断端縫合部)や白血病に合併する場合が多い。病型として気管支炎型,菌球(aspergilloma)型,肺膿瘍型,膿胸型,全身感染型がある。臨床診断は難かしい場合が多い。診断の確定には真菌学的培養と病理組織学的検査によらねばならない。培養は一般にサブロー培地が用いられているが,ツアベック培地が最も適している。喀痰中の真菌検査の場合,空中や口腔内からの真菌の汚染を防ぐために,硼酸などで十分うがいを行なった後,咳により喀出した痰を滅菌容器にとり,できるだけすみやかに検査することが望ましい。気管支鏡やメトラ氏ゾンデによる材料採取法がすすめられている。肺クリプトコックス症では髄膜炎をおこして始めて診断されることが多い。
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