Japanese
English
特集 21世紀の心不全治療の展望
心筋再生療法
Application of Regenerative Medicine to Myocardial Recovery
中谷 武嗣
1
,
富田 伸司
2
Takeshi Nakatani
1
,
Shinji Tomita
2
1国立循環器病センター臓器移植部
2国立循環器病センター再生医療部
1Department of Organ Transplantation, National Cardiovascular Center
2Department of Regenerative Medicine and Tissue Engineering, National Cardiovascular Center
pp.1015-1020
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902546
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はじめに
心不全に対する各種治療法の進歩により,重症心不全の治療成績は向上してきた.しかし,心筋の荒廃が高度な症例においては,心臓移植や人工心臓による心機能の代替あるいは置換が必要となる.心臓移植は,免疫抑制剤としてのシクロスポリンの導入と心筋生検による拒絶反応の定期的な検査の導入によりその治療成績は安定し,治療選択の一つとなったが,ドナー不足が大きな問題である.人工心臓は,現在埋込み携帯型左心補助人工心臓が広く用いられるようになり,末期的心不全に対し内科的治療よりも良好な成績を示すようになってきたが1),ポンプサイズ,感染・血栓制御,長期の安定性などいまだ解決すべき問題がある.
これら心臓置換法に対し,心筋の再生による治療が注目されるようになってきた.心筋再生手段としては,遺伝子治療と細胞を用いる方法の研究が進められている.前者には,血管新生因子を用いて,心筋梗塞の境界領域における虚血によりhibernationを起こしている心筋細胞を回復させ心筋収縮力を改善させることや,慢性虚血犬モデルにおいて冠動脈へのVEGF投与により毛細血管が増加することなどが報告されている.しかし,動脈の新生に関しては明らかになっていない.また,血管新生因子を用いる場合,心臓以外の血管新生を誘発し,脳・網膜などで重大な出血を引き起こす危険性がある.さらに腫瘍形成を引き起こす可能性もある.また,血管新生因子導入にnaked DNAやウイルスベクターを用いた場合,DNAの安定性,免疫応答,腫瘍発現などが問題となる.
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