REVIEW & PREVIEW
心筋再生療法の現況と展望
楠本 大
1
,
福田 恵一
1
1慶應義塾大学医学部・循環器内科
pp.1844-1846
発行日 2011年10月10日
Published Date 2011/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105429
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最近の動向
近年,わが国においても食生活の欧米化などにより生活習慣病が増加しており,生活習慣病をベースとして発症する心疾患も今後さらに増えることが予想される.虚血性心疾患や拡張型心筋症などにより一度心筋細胞が失われると,心筋細胞は増殖能をもたないために心機能は低下し最終的には心不全へと進行する.その終末像である末期重症心不全に陥ると予後はきわめて悪いことが知られている.薬物療法を中心とする内科的治療に抵抗性となり,根本的治療として心臓移植を行うしかないのが現状である.しかし心臓移植にもドナーの不足,免疫拒絶など解決すべき問題点があり,満足のいく治療法とはなっていない.
近年,幹細胞生物学の発達により,このような重症心不全に対する新規治療法として再生医療,細胞移植医療が注目を集めている.現在,骨格筋芽細胞,骨髄・末梢血由来細胞などを用いた臨床試験がすでに行われている.さらに体性幹細胞,胚性幹(ES)細胞,また体細胞に4つの転写因子(Oct3/4,Sox2,c-Myc,Klf4)を導入することにより作製されるiPS細胞が新たな移植用の細胞ソースとして注目を集めている.iPS細胞を心筋再生医療に用いるためには,心筋の効率的な分化誘導法の開発,心筋の精製法,効率のよい移植方法の開発が必要であり,近年さまざまな報告がされている.またさらに,未分化細胞を経ないで体細胞から直接心筋細胞を作り出す,直接リプログラミングに関する報告も最近されている.
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