Japanese
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特集 神経活性物質と呼吸
ノルアドレナリンと窒息警報
The Role of Locus Coeruleus Noradrenergic Neurons in Panic Disorder
有田 秀穂
1
Hideho Arita
1
1東邦大学医学部生理学
1Department of Physiology, Toho University School of Medicine
pp.11-16
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902404
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パニック発作と窒息感
パニック発作は,特別な理由なしに突然に,呼吸困難,めまい,動悸,死への恐怖などが出現し,10分程度で自然軽快するものである.発作が反復するという予期不安のために,外出することも制限されるようになる.内科的な諸検査では異常が見出されないのが鑑別のポイントである.三環系抗うつ薬のイミプラミンが著効を呈するが,最近はMAOや選択的セロトニン再吸収阻害剤も有効であるとされてきている1).
パニック発作は,通常の不安(全般性不安障害)と違い,呼吸困難や窒息感など呼吸症状が前面にみられる.それだけではなく,5%CO2吸入負荷や乳酸静注など,呼吸制御系に関係したチャレンジテストで発作が誘発されるという特異性もある.このような背景から,Klein2)は1993年にパニック発作のメカニズムとして,suffocationfalse alarm theory(窒息警報誤作動仮説とここでは訳すことにする)を提案した.すなわち,脳内のどこかに窒息検出器が存在して,それが活性化されると,窒息感を伴って窒息警報が発せられ,死の恐怖から逃避する行動や,過呼吸,頻脈などが発現するという仮説である.窒息状態に陥れば,健常人でも同様の反応が起こるので,これは生理的に備わった生体防御システムであるといえる.パニック障害の患者ではこの窒息警報の閾値が異常に低く設定されていると考えられる.
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