特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅲ.トランスミッターの放出・取り込みに作用する薬物
ノルアドレナリン
五嶋 良郎
1
Yoshio Goshima
1
1横浜市立大学医学部薬理学教室
pp.464-467
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901639
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ノルアドレナリンは哺乳類における交感神経節後線維終末における化学伝達物質である。ノルアドレナリンは中枢神経においても伝達物質として作動すると考えられる。実際,モノアミンの枯渇を引き起こすレセルピンがうつ症状を引き起こし,逆にその取り込みを阻害し,そのシナプス間隙濃度を増加させるメタンフェタミン,コカイン,イミプラミンなどの薬物が躁状態を引き起こす。抗うつ薬が投与直後より脳内モノアミンの再取り込みを阻害するにも関わらず,臨床効果が発現するのにより長期間を要する理由は不明である。しかし,現在抗うつ効果を有する薬物の多くがノルアドレナリン,セロトニンなどの取り込み阻害活性を示す事実は,同活性が抗うつ効果発現に直接あるいは間接に関与することを示唆する。この時間的乖離の一つの説明は,抗うつ薬投与初期に取り込み阻害により増大したシナプス間隙におけるアミンが,それらの放出を抑制性に制御するシナプス前(自己)受容体(後述)に脱感作を引き起こし,それにより二次的に負の制御が低下して逆に放出量が増えるというものである1)。1991年にコカインおよびノルアドレナリンに感受性のあるトランスポーターが分子的に同定され2),以来,その他の様々な神経伝達物質のトランスポーターが次々とクローニングされた3)。
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