巻頭言
最先端医療“血管新生療法”に思うこと
岩坂 壽二
1
1関西医科大学第二内科・心臓血管病センター
pp.3
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902402
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最先端医療の一つである血管新生療法を経験するなかで,医療チーム編成の構成を考える難しさと医療連携の重要性を知ることができた.わが国における心血管系の再生医学の一つの起爆剤は,1998年11月に米国ウイスコンシン大学がヒトES細胞(胚幹細胞)を発表したことである.さらに1999年2月に脳死患者から行われた臓器移植に大きく触発されたことも事実であり,ここに再生医学の臨床応用への歩を一気に進めることとなった.
血管新生には,血管成長・増殖因子を用いた遺伝子治療と,血管内皮前駆細胞を自家移植する方法とがある.われわれの施設でも,末梢血管疾患に対する自家骨髄細胞移植を積極的に進め,同時に冠動脈疾患に対する基礎的検討を行うとともに一部臨床応用を開始した.しかし,重症患者には骨髄細胞の採取は負担となる.そこで,末梢血幹細胞移植でも同様の効果を得ることができることを基礎的検討で確かめ,臨床応用も開始した.ASOによる虚血肢に対する血管新生療法が2000年6月より臨床応用された.現在までに11人のASO患者に対して自己骨髄細胞移植を実施した.11人中8人で下肢の血圧が1ヵ月後には10mmHg以上昇圧し,歩行距離は2.5倍以上増加し,下肢の疼痛は11人中10人で完全に消失した.血管造影では著明な血流増加が観察された.
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