特集 内科医に求められる他科の知識―専門家が伝えるDo/Don’t
第5章 産婦人科
TOPICS
最先端のホルモン補充療法
寺内 公一
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1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科女性健康医学講座
pp.1914-1915
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika124_1914
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1990年代前半,ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は更年期障害の治療に留まらず,心血管疾患の予防・骨粗鬆症性骨折の予防・性交障害の治療・尿失禁の治療・認知症の予防・皮膚老化の予防など,ありとあらゆる効果を有する魔法の弾丸とみなされていたが,なかでも閉経後女性の最大の死因である冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD)予防への期待度は高かった.エストロゲン(E)の低下とともにLDL-C,Apo-Bは増加するが,閉経後女性にEを投与すればこれらは減少に転じる.その他Eには血管内皮細胞や平滑筋細胞への直接作用を含むさまざまなアテローム性動脈硬化抑制効果があり,観察研究においてもHRTのCAD予防効果はゆるぎないものに思えた1).しかし,基本的に健康な平均年齢63歳の閉経後女性16,608名を集めた史上最大の無作為化比較対照試験(randomized controlled trial:RCT)であるWomen’s Health Initiative(WHI)研究において,結合型ウマEを用いたHRT群のCAD発生率はプラセボ群に比べて有意に高く,HRTによる心血管疾患予防というコンセプトは破綻したものと思われた2).これが2000年代前半の状況である.
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