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はじめに
冠攣縮誘発負荷試験のゴールドスタンダードとして以前より経静脈投与エルゴノビンが用いられてきた1,2).近年,アセチルコリンの選択的冠動脈内投与をYasueら3)が,またエルゴノビンの冠動脈内投与法をIshiseら4),Hackettら5)が報告して以来,冠攣縮誘発法は経静脈投与法から選択的冠動脈内投与法に移行した6,7).欧米人に比し,冠攣縮を多く認めるわれわれ日本人では8,9),胸痛の原因検索・診断目的で観血的冠攣縮誘発負荷試験を必要とする場合が臨床上多い.経静脈投与法に比し,冠動脈内選択的投与法はいくつかの利点を有する.しかし,アセチルコリンは血管内皮機能の判定には有用であるが,冠攣縮誘発負荷薬剤としては不適であるとする報告も見受けられる10).臨床的に同一症例でアセチルコリンとエルゴノビンの両薬剤の血管反応性を検討した報告は数少ない11〜14).われわれは,日本人におけるアセチルコリン負荷試験とエルゴノビン負荷試験の冠攣縮誘発頻度を報告した15,16).今回は,この両方法の有用性と問題点を検討した.
冠攣縮誘発負荷試験は施行前に患者に十分説明し承諾を得た症例のみに施行した.
各種心疾患を,虚血性心疾患群として安静時胸痛例(A群),労作時胸痛例(B1群),安静兼労作時胸痛例(B2群),心筋梗塞例(C群),冠動脈形成術後例(D群)に分類し,非虚血性心疾患群として非定型的胸痛例(E群),弁膜症例(F群),拡張型心筋症例(G1群),肥大型心筋症例(G2群),その他(H群)に分類した.なお,冠動脈形成術後例の冠攣縮陽性枝は,冠動脈形成術施行枝のみでなく冠動脈形成術非施行枝も含めたものとした.
冠攣縮は,冠動脈造影上少なくとも90〜99%以上の冠収縮を認めた場合に冠攣縮陽性と定義した.
症例分布と誘発冠攣縮頻度の統計はx2検定を用い,p<0.05を有意差ありと判定した.
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