Japanese
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特集 急性肺傷害の発症因子をめぐって
急性肺傷害の発症におけるMAP kinase伝達系の関与
Role of MAP Kinase in Acute Lung Injury
橋本 修
1
,
権 寧博
1
,
林 伸一
1
Shu Hashimoto
1
,
Yasuhiro Gon
1
,
Shinichi Hayashi
1
1日本大学医学部第一内科
1First Department of Internal Medicine, Nihon University School of Medicine
pp.353-359
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902270
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はじめに
急性肺傷害の原因は様々であり,その発生機序も複雑である,従来から,急性肺傷害の発生における好中球の役割が議論されており,好中球が重要な働きを演じている成績とこれを否定する成績が報告されている.急性肺傷害モデルが異なることがこのような相反する成績が示される原因として考えられるが,好中球が急性肺傷害の発生に関与する病態が存在することは間違いないようである1).臨床的にも,敗血症に伴う急性肺傷害では末梢循環中の好中球の除去療法が有効な治療方法として報告されており,その発生に好中球が関与することを支持すると思われる.
炎症局所に好中球に限らず炎症性細胞,免疫担当細胞が集積する過程はよく知られており,病変局所の走化性因子の産生,血管内皮細胞上の接着分子発現,炎症性細胞・免疫担当細胞上の接着分子発現,などがネットワークを形成し,細胞浸潤が起こる.以上の過程のいずれかを標的に急性肺傷害の発生の予防と治療を考える.
細胞外刺激を受けた細胞は,細胞内の刺激伝達機構が活性化,核内転写因子の活性化と遺伝子DNAの特異的プロモーター領域への結合,遺伝子の転写,翻訳の過程を経て蛋白が合成される,急性肺傷害の発生機序は複雑であるが,本稿では肺血管内皮細胞のサイトカインと接着分子発現と肺炎症性細胞のサイトカイン発現を制御する細胞内シグナル,さらに細胞内シグナル分子の阻害薬の肺傷害モデルの成績を解説する.
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