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はじめに
急性肺損傷・急性呼吸促迫症候群(ALI/ARDS)の疾患概念は,“敗血症などさまざまな原因疾患の存在する患者に急性に発症した両側肺のびまん性浸潤影を呈する呼吸不全で,その原因として心不全が否定されるもの”であるが,その本態は,エンドトキシン血症,吸引性肺炎,高濃度酸素曝露などさまざまな原因疾患に伴う刺激によりTNFαやinterleukin−8(IL−8)などのサイトカイン産生や接着分子などの発現によって好中球をはじめとする炎症細胞が肺に集積し,活性化され,さらにサイトカインや活性酸素,蛋白分解酵素,アラキドン酸代謝産物など炎症性メディエイターを産生放出することによって,血管内皮細胞や気道上皮細胞の損傷が惹起され血管透過性充進による肺水腫が形成されるものである.
このような病態に関与する因子は多彩であるが,なかでもオキシダントは中心的な役割を演じていると考えられる.ARDS患者の肺でオキシダントの産生が増加していることは,ARDS患者の呼気中の過酸化水素濃度が上昇していること1)や気管支肺胞洗浄液中の活性酸素が増加していること2),肺胞上皮被覆液中のアンチオキシダントである還元型グルタチオンが減少し酸化型に変換していること2)などから明らかである.
そもそも呼吸器は酸素やオゾン,タバコ煙など外因性オキシダントの作用を直接受ける臓器であり,これにより慢性気管支炎,肺気腫,喘息といった炎症性疾患が惹起される.また,種々の呼吸器炎症性疾患において肺胞マクロファージや局所に集積した好中球などから種々の刺激により内因性にオキシダントが放出され組織傷害を惹起している.さらに,このような病態においてはオキシダントによる直接傷害だけではなく,サイトカインの産生やケモカイン,接着分子を介して集積する炎症細胞依存性の組織傷害といった経路も重要であり,最近,このようなサイトカイン産生や接着分子発現といった炎症形成の病態においてもオキシダントが細胞内情報伝達や遺伝子の転写因子の活性化などに関与していることが示されている3,4).
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