Japanese
English
特集 急性肺傷害の発症因子をめぐって
急性肺傷害の発症における増殖因子の役割
Growth Factors in Acute Lung Injury
海老名 雅仁
1
,
貫和 敏博
1
Masahito Ebina
1
,
Toshihiro Nukiwa
1
1東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野
1Department of Respiratory Oncology & Molecular Medicine, Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University
pp.341-345
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902268
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はじめに
急性の肺組織傷害とは,血管とガスとの境界を形成している肺胞上皮細胞と肺胞毛細血管内皮細胞の傷害を意味する.急性肺傷害はこの境界を形成する細胞群の透過性が亢進することによって,蛋白成分に富む液が肺胞腔内に浸出することによって始まる.これはまた,肺胞上皮の連続性が絶たれ,II型肺胞上皮細胞が正常な上皮細胞の持つ液体成分の輸送能を阻害し,肺胞内の液体成分の除外ができなくなるためとも考えられる.また,II型肺胞上皮細胞が傷害されることによってサーファクタントの産生が減少する.さらに肺胞上皮がなくなることによって細菌性肺炎が敗血症になりやすい状態となる.これらの結果,肺胞上皮の再生ができなくなるほどの傷害を受けた場合には,不可逆的な線維化形成が進行することとなる.急性肺傷害時に関わる増殖因子として報告されているものは少なくないが,ここでは肺胞上皮細胞,血管内皮細胞,そして線維芽細胞の増殖などによって組織の修復や線維化を進める諸因子を示し,病態との関わりを述べる.
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