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特集 急性肺傷害の発症因子をめぐって
急性肺傷害の発症におけるサイトカインの役割
Role of Cytokines in Acute Lung Injury
谷野 功典
1
,
西村 正治
1
Yoshinori Tanino
1
,
Masaharu Nishimura
1
1北海道大学医学部第一内科
1First Department of Internal Medicine, Hokkaido University School of Medicine
pp.325-331
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902266
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はじめに
急性肺傷害には,広義には炎症の主体が好中球である急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respi—ratory distress syndrome),リンパ球主体の薬剤性肺炎,好酸球主体の急性好酸球性肺炎などが含まれ,それぞれ発症の要因,機序が異なると考えられる.しかし,狭義には1992年に開催されたARDSに関するAmerican-European ConsensusConference1)で定義されたように,ARDS/ALI(acute lung injury)を指すと考えられる.したがって本稿では,急性肺傷害の代表と考えられるARDSにおけるサイトカインの役割について解説する.
ARDSは微小血管透過性亢進による非心原性透過性肺水腫であり,病理学的には好中球の肺浸潤,肺胞性浮腫,硝子膜形成,肺血管内皮と肺胞上皮損傷といったびまん性肺傷害(DAD:diffusealveolar damage)を呈する(図1)2).サイトカインは,一般的には30kDa以下の低分子量可溶性蛋白であり,細胞間の情報伝達を行っている.当初,サイトカインはリンパ球などの血液細胞によって産生されると考えられていたが,それ以外にも上皮細胞,線維芽細胞や血管内皮細胞など種々の細胞が産生することがわかってきた.サイトカインは炎症などにおいて“cytokine net—work”と呼ばれる連鎖的な反応を起こし,病態に深く関与している.
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