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特集 ポスト・ゲノム時代における呼吸器疾患へのアプローチ
遺伝性呼吸器疾患へのアプローチ
Approach for Inheritant Respiratory Diseases
寺本 信嗣
1
Shinji Teramoto
1
1山王病院内科
1Sanno hospital
pp.143-148
発行日 2001年2月15日
Published Date 2001/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902238
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はじめに
ヒト全ゲノムの塩基配列の解読が急速に進行するなか,呼吸器疾患の病態解析も新たな局面を迎えている.1970年代の呼吸生理学の進歩に続いて訪れた分子生物学の時代は次々と画期的な進歩をもたらしてきた.その代表の一つが,呼吸器疾患の遺伝病である嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)の原因遺伝子(Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator,CFTR遺伝子)のクローニングであった.このオリジナル論文がScienceにフルペーパーとして3本掲載されていることからも,この発見の重要性がうかがえる.当初の予測では,このCFTR遺伝子発見によって難病の代表であったCFは画期的に予後が改善することが期待された.そして,遺伝子治療,ヒトゲノム研究時代に突入した(図1)1).しかし,1989年のCFTR遺伝子発見を凌ぐ成果はみられていない.特にCFはヒトゲノム計画においてシンボリックな役割を果たしてきたため2),この10年の経過を検証することは,ポストゲノム時代の呼吸器病学を考えるうえで多くの示唆に富んでいる3〜6).
本稿では,呼吸器の遺伝性肺疾患として世界的には最も頻度が高く,研究のレベルの高い嚢胞性線維症(CF)の肺疾患を中心に解説する.
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