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はじめに
近年,医療心理学や行動医学が発展して患者への系統だった心理的配慮や行動療法的介入1)が可能になり,身体疾患への心身医学的アプローチ(心身医療)の重要性が広く認められるようになった.呼吸器領域でも,過換気症候群や一部の気管支喘息などの心身症が知られるようになったが,慢性咳嗽や「かぜ症候群」の繰り返しなどは心身症とは気づかれにくい.また,慢性呼吸不全や肺癌など本来は身体的疾患であるが二次的に重要な心理社会的因子が加重してくるものも心身医療の対象となることは,まだ十分に知られているとはいえない.心身医療は一部の専門家のみが引き受けるものではなく,一般臨床家が診ている多くの患者のなかにこそ,意外にその対象がいるものである.
また心身医療は,よく誤解されているように,心理社会的因子が主な原因で身体疾患が起きると考え,心理社会的因子の処理を優先させるというものではない.そのポイントは,身体疾患の的確な診断を患者の全体的なアセスメントと結びつけて行い,ストレス状態への適切な配慮と対処法をも併せて指導することにある.したがって,単に両親との別れ,就職や転職・退職,職場葛藤,結婚,妊娠,離婚,引っ越しの「人生のできごと(life events)」や「日常のいらいら事(daily has—sles)」などのストレス事項が直線的に身体疾患に影響を与えるとは考えない.そのような問題への認知・対処行動のあり方や本人の性格,生きがい・生き方,mental supportの有無などが関与し,神経・内分泌・免疫作用とlife styleなどの繰り返される行動を介して疾患の経過に影響を与えていく1)という理解が重要である(図1).
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