Japanese
English
Bedside Teaching
ヒト心房利尿ホルモン(hANP)を用いた心不全治療
Treatment of Heart Failure with hANP
平光 伸也
1
,
森本 紳一郎
1
,
菱田 仁
1
Shinya Hiramitsu
1
,
Shin-ichiro Morimoto
1
,
Hitoshi Hishida
1
1藤田保健衛生大学循環器内科
1Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, Fujita Health University School of Medicine
pp.601-605
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902108
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はじめに
近年心不全の病態解明が進むにつれ,本症における血行動態の異常には,神経体液性因子が深く関与していることが明らかとなってきた.すなわち,神経体液性因子は短期的には代償機序として働くが,反面心筋傷害性をもたらすこともあり,長期にわたるとむしろ心不全を進行させるおそれがある.
これらの疾患概念の変化に伴い,心不全の治療薬も心筋保護を配慮した薬剤が用いられるようになってきている.われわれの教室ではこの点を重視し,数多くの既存の心不全薬を,心不全急性期に有効である薬剤と長期予後を改善する薬剤とにはっきりと分類し(表1),患者の状態に応じて使い分けるように心がけている.
現在,神経体液性因子を改善させ,心筋保護作用を有する薬剤にはβ遮断薬,ACE阻害薬,AT−1受容体拮抗薬,human atrial natriureticpolypeptide(hANP)1)が存在すると考えている.前三者の薬剤は既に大規模臨床試験2〜4)の結果から,その有用性や予後の改善が確認されているが,後者のhANPは1983年に本邦のKangawa,Matsuoら1)により構造決定されたナトリウム利尿ペプチドファミリーの一種で,1995年より世界に先駆けて本邦でのみ使用可能となった心不全治療薬であり,まだ臨床的なevidenceは十分ではない.本剤は極めてユニークな薬理作用を有しており,心保護作用を有する心不全治療薬として今後幅広く使用されると予想される.
本稿では,このhANPの心不全に対する薬理作用について論ずるとともに,その使用法の実際を解説する.
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