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■慢性閉塞性肺疾患の病態—気道炎症と病態をめぐる最近1年間の話題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は慢性気管支炎あるいは肺気腫による不可逆性の気道閉塞を特徴とする疾患であり,気管支,細気管支,肺胞に至る気道の広範囲の障害,破壊による構造変化に起因する.ほとんどは喫煙が原因であり,肺気腫を含め,慢性の気道炎症性疾患と考えられ,その機序についての研究が盛んに行われるようになった1).特に喫煙者の15〜20%にしかみられない閉塞性障害の急速な進行,すなわちFEV1の急速な低下とCOPDに特徴的な気道炎症とどのような関係にあるのかが注目されているが,未だ明らかではない.気管支喘息も慢性の気道炎症を特徴とする疾患であり,治療としてステロイドが有効であることは周知のことであるが,安定期にあるCOPDではその有効性が現時点では証明されていない.しかし,安定期にあるCOPDの約10〜20%の患者において閉塞性障害の改善を示し,有効性が報告されている.また,COPDの急性悪化時にも有効であることが報告されているが,その詳細な機序は不明である.COPDの気道炎症において以前より好中球の重要性が示唆されているが,最近ではその慢性期においてTリンパ球やマクロファージのような単核球や気道上皮細胞の役割が重要であることが示唆されている.これらの細胞は生体防御として重要な役割を果たしている一面,種々の病態においては組織障害を惹起する重要なエフェクター細胞でもある.気道の障害は喫煙や外来有害物質の直接的な障害と,これに伴って炎症細胞の気道への集積・活性化を来し,気道上皮や炎症細胞からオキシダント,プロテアーゼ,炎症惹起メディエーターなどの産生遊離が惹起される.しかしながら,喫煙者の15〜20%にしかCOPDは発症せず,必ずしも喫煙量とは関係しない.この喫煙による既存の気管支・肺胞構造の破壊・再構築は単に炎症反応の過剰によるというより,むしろ本質的には炎症細胞,有害物質の処理や炎症を鎮める防御機序に問題があって不均衡を生じ,主にTリンパ球やマクロファージを中心とした慢性炎症の像を呈し,不可逆性の障害を来すと考えられる.最近ではこの生体防御に関わる種々の酵素,メディエーターの遺伝子多型に基づく反応性,酵素活性の相違といった宿主側の遺伝的な異常も報告されている.本稿では気道炎症の機序に焦点をあて,最近のトピックスについて記述する.
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