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特集 睡眠呼吸障害の新展開と展望
睡眠の液性調節機構と遺伝子研究
Molecular Approach to Sleep-controlling Mechanisms
角谷 寛
1,2
Hiroshi Kadotani
1,2
1京都大学大学院医学研究科先端領域融合医学研究機構
2科学技術振興機構 さきがけ,JST,PRESTO
1Kyoto University Graduate School of Medicine, HMRO
pp.349-353
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100280
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はじめに
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠という異なる状態があり,これら2種類の睡眠を調節する脳内の部位(睡眠中枢)は前脳基底部から脳幹にかけて分化している.そこでは,神経活動に基づく神経機構と睡眠物質に基づく液性機構の2種類の調節機構があって,相補的な相互作用のもとに睡眠・覚醒状態が動的にコントロールされている.
また,睡眠の調節には二つの基本法則がある.第一の法則は,睡眠は約24時間を単位とするリズム現象であり,脳内に存在する生物時計によって管理されているというものである.第二の法則は,睡眠はホメオスタシス現象であり,先行する覚醒時間の長さによって睡眠の量と質が決定されるというものである.これらの法則はお互いに協調しており,互いに相手を補完しながらも独立に作用する1).
哺乳類の概日リズムの発信器は視床下部に位置する視交叉上核である.視交叉上核で約24時間の周期がどのように制御されているかについて,いまや分子レベルで説明しうる状況になっている2).しかし,睡眠に直接関与する遺伝子についての報告は限られていた.近年,分子生物学的手法を用いて睡眠・覚醒の調節機構を分子レベルで理解しようとする研究が進展している.
本稿では睡眠の液性調節機構,実験動物を用いた遺伝子同定,ヒトを対象とした疫学的研究を中心に,睡眠調節に関わる遺伝子研究の近年の知見を解説する.
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