骨カルシウム代謝調節最前線
ビタミンEによる骨代謝調節の分子機構
藤田 浩二
1
,
竹田 秀
1東京医科歯科大学再生医療研究センター
キーワード:
Vitamin E
,
骨吸収
,
骨密度
,
骨組織リモデリング
,
ノックアウトマウス
,
MAP Kinase p38
,
Alpha-Tocopherol
,
Receptor Activator of Nuclear Factor-Kappa B
,
MITF転写因子
,
Alpha-Tocopherol-Associated Protein
,
DCSTAMP Protein
Keyword:
Bone Resorption
,
Vitamin E
,
Bone Density
,
Bone Remodeling
,
Mice, Knockout
,
alpha-Tocopherol
,
p38 Mitogen-Activated Protein Kinases
,
Microphthalmia-Associated Transcription Factor
,
Receptor Activator of Nuclear Factor-kappa B
,
DCSTAMP Protein, Human
pp.241-246
発行日 2014年7月1日
Published Date 2014/7/1
DOI https://doi.org/10.19020/J02201.2014295634
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ビタミンEは広く普及しているサプリメントであるが,他の脂溶性ビタミンと異なり,骨への作用は明らかではなかった.われわれは,ビタミンE欠損のマウスモデルであるαトコフェロール輸送タンパク欠損マウス(Ttpa-/-マウス)が,骨吸収の減少により高骨量を示すことを発見した.培養細胞における検討から,生体内のビタミンEの主成分であるトコフェロールが,抗酸化作用とは独立した機構で,破骨細胞の融合,骨吸収を促進することを示した.これは,αトコフェロールがMAPキナーゼ14(p38)のリン酸化を促進することで,小眼球症関連転写因子(mitf)を活性化し,活性化されたmitfが破骨細胞融合に必須であるDC-STAMPをコードする遺伝子Tm7sf4のプロモーター領域に直接結合することによるものであることを証明した.実際に,Ttpa-/-マウスでみられる高骨量は,Tm7sf4-/-トランスジェニックマウスと交配することで改善された.さらに,一般的にヒトが摂取しているサプリメントに相当する量を体重当りの摂取量に換算してトコフェロールを添加した飼料を,野生型マウスやラットに与えると,骨量が減少した.以上の結果は,ビタミンEが破骨細胞融合の制御を介した骨量の規定因子の一つであることを示す.最近,ヒトにおける疫学的検討から,αトコフェロールの摂取により血中Γトコフェロール濃度が低下し,骨量減少を惹起する可能性が報告されており,今後,大規模な疫学調査を通して,ヒトにおけるビタミンEと骨粗鬆症発生との関連性が明らかになることが期待される.
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