Japanese
English
綜説
呼吸器疾患と栄養—慢性閉塞性肺疾患における栄養障害とその治療
Nutrition in Pulmonary Diseases
石坂 彰敏
1
,
仲村 秀俊
2
,
春日 明
1
Akitoshi Ishizaka
1
,
Hidetoshi Nakamura
2
,
Akira Kasuga
1
1東京電力病院内科
2川崎市立井田病院呼吸器科
1Department of Medicine, Tokyo Electric Power Company Hospital
2Respiratory Division, Department of Medicine, Kawasaki City Ida Hospital
pp.1109-1120
発行日 1999年11月15日
Published Date 1999/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901993
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はじめに
呼吸器内科専門の医師ならば一度は見たことのあるNetterの図譜にある“pink puffer”の,やせて,いかにも栄養不良を思わせる姿は典型的な慢性肺気腫患者のそれである.
慢性の呼吸器疾患において栄養不良(malnutri—tion)が存在することは19世紀末より知られていた.1950年代に入ってCOPDにおける栄養障害に関するいくつかの臨床研究が散見されるようになった1〜4).その後も一部の施設を中心に研究が進展してきたが,食物の摂取,代謝,排泄と直接結びつく消化管,腎臓や肝臓などと異なり,栄養代謝との関連がイメージしづらい肺疾患における栄養療法については,医師や栄養士らの関心は比較的薄かった.さらに,栄養療法が効果を発現するには時間を要することや,効果を定量的に評価することが難しいことなどが,研究テーマとして取り上げることを躊躇させる要因となっていたと思われる.
慢性閉塞性肺疾患(COPD)における栄養障害の原因は,病態の進行に伴うエネルギー消費量の増加に対してエネルギー供給量が不足することによる.これを補うために主たる身体構成蛋白である筋肉蛋白が消費される.当然ながら,呼吸筋も消耗し,それにより原疾患の予後を悪くしている可能性がある.COPDにおいて,肺機能の指標と栄養障害との関連が指摘され,それらに因果関係が存在する可能性が示唆されている5〜7).しかしながら,COPDもしくはその予備軍の肺機能悪化の防止や予後の改善における栄養療法の効果は未だ明らかでない.
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