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7月23日から25日まで,早稲田大学の国際会議場でRespiration and Emotionの国際シンポジウムが開かれた.パニック・ディスオーダーや過換気症候群,さらには喘息など呼吸器疾患においても呼吸の感覚や,行動性調節の機能異常として心理的要素がかなり強く働いている.早稲田大学の人間科学部と共催し,呼吸の行動性調節に関して心理学と生理学をぶつけてみよう,というのがこのシンポジウムの目的であった.呼吸は心理学の分野でも多くの研究があり,快感,喜びなどpositiveなmoodのときの呼吸パターンと不快,悲しみなどnegativeなmoodのときの呼吸パターンの違いに興味が持たれている.心理学ではヒト一人一人の解析に中心が置かれ,心理的変化との関係が詳しく分析されている.生理学,医学ではヒトそれぞれというより対象となる群,たとえば10人が同じ変化をしなくてはデータにならない.しかし,生理学でも行動性調節から観る場合には対象者それぞれの個性も重要な要素となり,無視できない.1987年にStockholmでRespira—tory Psychophysiologyという国際シンポジウムが開かれた.過換気症候群やパニック・ディスオーダーの呼吸のデータが多く示され,心理学的にはthink testなど診断治療上役立つ研究が示された.しかし,そのシンポジウムでも人の個性にまで踏み込んだものはなかった.また,Psycho—physiologyは人間を対象としたものであり,直接的にも間接的にも人間の脳を語る学問である.そこに,生理学的手法が取り入れられていても,人間の脳活動を記録したものまでは出ていなかった.最近の脳研究,特にヒトにおける脳活動の記録法は飛躍的に進歩しており,心理と生理が結びつく時代にきている.
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