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はじめに
気道上皮被覆液(epithelial lining fluid:ELF)からは呼吸器疾患の病態を把握するうえで重要な情報が得られる可能性があるため,これまで気管支肺胞洗浄法(bronchoalveolar lavage:BAL)が広く行われてきた.しかし,BALでは血液ガスが悪化したり,生理食塩水の回収が不良な例が多いなど,問題点も少なくない.マイクロサンプリング法(bronchoscopic microsampling:BMS)では気管支鏡下にELFが直接採取可能であるため,非侵襲性,定量性などでBALより優ると考えられる.
本稿では,BMSの手技と検体処理法を解説するとともに,近年報告された臨床応用例について紹介する.さらにBMSにより採取したELFを用いたプロテオーム解析の可能性についても言及したい.
BALと比較した場合のBMSの利点,問題点を表1に列記した.BMSの低侵襲性と定量性は大きなメリットであるが,逆にBALでは,炎症細胞が十分に回収され細胞分画解析が容易であり,肺胞領域のELFも大量に得られる.BMSの特徴を生かすことにより,BALでは適応外と考えられてきた様々な呼吸器疾患へのマイクロサンプリング法の応用が期待される(表2).非侵襲性によりARDS,肺気腫,間質性肺炎,肺感染症への応用が可能と考えられる.また,BMSの気道の部位の選択性の高さにより,喘息,肺癌での応用が期待される.また,BMSの定量性の高さは,ELF中の薬物濃度の評価を可能にすると思われる.個々の臨床応用例については後述するが,今後各種の呼吸器疾患において,BMSにより採取したELF中メディエーターに関する知見が集積されれば,目的に応じてBALとBMSが使い分けられるものと期待される.
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