Japanese
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特集 ハイポキシアへの耐性
ハイポキシアに続発する心血管系の負荷耐性
Stress Response of Cardiovascular System Induced by Hypoxia
西田 昌司
1
,
青木 和浩
,
葛谷 恒彦
Masashi Nishida
1
,
Kazuhiro Aoki
,
Tsunehiko Kuzuya
1大阪大学医学部第一内科・病理病態
1First Department of Internal Medicine and Pothophysiology, Osaka University Faculty of Medicine
pp.565-570
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901909
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心臓の代謝
心臓は,休みなく律動的に血液を全身に送り出すという臓器特異性を持つために,心臓を構成する心筋細胞は持続的に大量の収縮エネルギーを産生する必要が生じる.したがって,心筋細胞は,瞬発的に収縮蛋白質の収縮をもたらす白筋型の筋細胞とは異なり,持続的に活動する赤筋型筋細胞に近い表現型を持つ.すなわち,エネルギー産生は,細胞質の解糖系を介した嫌気的代謝よりも,細胞内ミトコンドリアの電子伝達系の好気的代謝に依存してATPを産生する.そのために酸素供給への依存が大きい代謝特異性を持っている1).
このように,酸素需要の高い心臓への酸素供給は,冠動脈による冠血流を介して行われている.冠循環は,心臓の酸素需要を満たすため安静時においても他の循環系に比し動静脈間の酸素分圧較差が大きく,労作などによる酸素需要のさらなる贈加に対しては,冠血流量の増大によって対応していく必要がある.そのために,冠循環は自己調節能にとみ,生理的な範囲での冠灌流圧の変化に対しては血流量は一定に保たれ,心室仕事量によってのみ血流量が規定される2).このような自己調節能は,神経体液因子,心筋代謝物質,血管壁細胞機能などにより複雑に制御されていることが報告されているが,近年,動脈硬化性疾患の増加とともに,血管壁の器質的狭窄,血管壁細胞の機能異常により冠血流予備能が低下し,冠血流の需要増大に対応した血流の自己調節が十分に行われない症例が増加し,その結果,虚血性心疾患の発症率が増加している.
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