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特集 冠血管再狭窄と平滑筋増殖
血管平滑筋増殖におけるヘリックス-ループ-ヘリックス型転写因子Idの関与
The Role of a Helix-loop-helix Type Transcriptional Factor, Id, in the Growth of Vascular Smooth Muscle Cells
西田 昌司
1
,
葛谷 恒彦
1
,
多田 道彦
1
Masashi Nishida
1
,
Tunehiko Kuzuya
1
,
Michihiko Tada
1
1大阪大学医学部第一内科病理病態学
1Department of Medicine and Pathophysiology, Osaka University School of Medicine
pp.251-255
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901019
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血管のリモデリングと平滑筋表現型
血管の構築は,形態形成期以降,確定した不変の構造をとるものではなく,圧負荷,容量負荷など種々の負荷に対応して改変を示すものであることが認められつつある.このような血管の再構築(vascular remodeling)1)において,求心性の血管内腔狭窄病変は,当該血管領域の虚血性病変を二次的に惹起するため,例えば脳,心臓における虚血性疾患の予防,治療などの観点から,その病態解明が鋭意進められている.
血管内腔の狭窄性病変の原因としては,従来より粥状動脈硬化症が広く研究されてきたが,近年,経皮経管冠動脈形成術(PTCA)の普及とともにPTCA後の再狭窄,さらには,心臓移植後の急速な動脈硬化促進などの存在が明らかになってきた.内腔狭窄はそれぞれの治療法の予後を決定する重要な因子となるため,その予防策が種々試みられている.これら3種の病変の病態は,血管内皮細胞の状態,関与する血球細胞,病変の背景など何れもが異なるにもかかわらず,内腔の狭窄を形成する共通の病態因子の一つとして中膜平滑筋の内膜への遊走,増殖が挙げられる(図1)2).しかし,従来の再狭窄予防策としては,臨床応用可能な薬剤の制限から,主として抗血小板,抗血栓療法が試みられてきたが十分な成果は得られていなかった3).
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