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はじめに
心房細動はその罹患率は全人口の0.4〜0.9%と推測されるが,加齢に大きく影響され,70歳以上では約10%と非常に高率である.最近の報告によると,心房細動年間発症率は65〜74歳男性で1.8%,75〜84歳男性で4.3%と以前よりさらに増加しているようである1).心房細動はそれ自体は,通常WPW症候群に伴うもの以外は不整脈として致死的に働くことはない.しかし最も注意しなければならない点は,その合併症としての血栓塞栓症である.心房細動に伴う脳塞栓症の発生頻度は,他の危険因子にも依存するが年率0.5〜5%と報告されており,心房細動のない場合に比べて約5倍に増加するとされる.基礎心疾患がある場合には当然であるが,いわゆる基礎心疾患がない孤立性心房細動においても心血管死亡率が有意に高いことも最近報告されている.
このように高い罹患率と発生率,さらに合併症としての血栓塞栓症の高い発生頻度から,現在では心房細動は積極的に治療,管理すべき疾患として考えられるようになった.しかし,心房細動自体の病態が完全に把握されておらず根本的治療法がない現在,少なくとも発作性心房細動を慢性化させないことで脳梗塞発症率の減少をめざすことは一つの治療方針として重要である.発作性心房細動の慢性化をいかに予防するかについて,またなぜ心房細動が慢性化しやすいかについて最近になり注目すべき概念が提唱された.これは「心房細動による心房筋のリモデリング」と呼ばれ,心房細動を生じる基質としての心房筋の性格そのものが,心房細動それ自身によって影響されることを意味する.このリモデリングを抑止することによって心房細動の慢性化を予防するという治療戦略はきわめて魅力的である.
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