Japanese
English
特集 心房細動をめぐって
心房機能,心室機能からみた心房細動
Atrial and Ventricular Function in Atrial Fibrillation
岩永 史郎
1
Shiro Iwanaga
1
1慶應義塾大学病院中央臨床検査部心機能室
1Non-invasive Cardiology Lab., Department of Laboratory Medicine, Keio University Hospital
pp.229-234
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901858
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
近年,人口の高齢化に伴い心房細動を有する症例が増加している.健常人における心房細動の罹患率は年齢とともに増加し,60歳以上の人口のおよそ1%,70歳以上の人口の5%と報告されている1).心房細動を有する症例の多くは無治療で,または心拍数を抑制する最小限の治療のみで,平均的な予命を全うすることができる.しかし,心房細動を有する症例のなかには,血栓塞栓症や心不全などの合併症を来す症例がある.心房細動に伴う左房壁運動低下は血栓形成を促進し,脳梗塞などの塞栓症の危険率を約5倍に増加させる2).しかし,左房内血栓や塞栓症を発症する症例は,心房細動症例全体からみると必ずしも多いわけではない.心房細動を合併したリウマチ性弁膜症では塞栓の発症率が高いことが知られているが,非弁膜症性心房細動(non-valvular atrialfibrillation, NVAF)における脳梗塞発症の危険因子は未だ十分に解明されていない.同様に心不全の発症にも,心房収縮が消失することのみではなく,高頻度心室応答による頻脈,合併する弁膜症,心室の収縮機能および拡張機能など複数の因子が関与する.このため,心房細動下にも心機能に問題を生じない症例もあれば,拡張型心筋症に類似する左室収縮機能障害を来す症例や器質的心疾患を有していて頻脈と心房収縮の消失から心不全を起こす症例もある.心房細動下の心房機能,心室機能は,血栓塞栓症や心不全などの合併症の発症を決定する重要な因子である.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.