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特集 肺疾患とレドックス
ウイルス感染とレドックス
Redox Regulation in Viral Pathogenesis
赤池 孝章
1
Takaaki Akaike
1
1熊本大学医学部微生物学教室
1Department of Microbiology, Kumamoto University School of Medicine
pp.127-134
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901842
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はじめに
感染症は,宿主と病原体とのデリケートな相互作用により成立する.ウイルス感染症において,ウイルスの増殖による直接的組織傷害(いわゆるcytopathic effect, CPE)のみならず,生体側の炎症反応を介した間接的組織傷害がもたらされる.われわれはこれまで,生体の初期感染防御反応のエフェクター分子として産生される酸素ラジカルのウイルス感染病態における役割を解析してきた.すなわち,マウスのインフルエンザウイルス肺炎モデルを用いた一連の研究により,ウイルスの生体内増殖に対して産生される酸素ラジカルであるスーパーオキサイド(O2—)が,感染防御作用を発揮することなく,宿主に対して自己損傷をもたらすことを報告してきた1〜4).
近年,生体内における酸素ラジカルとは異なっ)た無機ラジカルである一酸化窒素(nitric oxide,NO)の多彩な生理活性が注目されている5,6).NOは,これまで知られている情報伝達物質とは異なり,化学的反応性に富むラジカルである.生体内で生成したNOは,種々の酸化反応を介して最終的に比較的安定なNO2—やNO3—イオンとなる.NOの病態生理活性を考えるうえで最も重要な点は,生体内でNO合成酵素(NO synthase,NOS)からつくられたNOが,共存する分子状酸素(O2)や酸素ラジカル(活性酸素),さらには重金属(Fe, Cu)と反応し,より反応性に富む窒素酸化物が生じ,NOそのものには認められない多彩な活性を発揮するということである.
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