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ADF/チオレドキシンとレドックス制御
佐登 宣仁
1,2
,
北岡 有喜
1
,
淀井 淳司
1
1京都大学ウイルス研究所生体応答学研究部門
2京都大学医学部附属病院麻酔科
pp.607-608
発行日 1994年7月1日
Published Date 1994/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902077
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ADF(adult T cell leukemia-derived factor;ATL由来因子)は,成人T細胞白血病(ATL)患者末梢血リンパ球から樹立されたHTLV-Ⅰ陽性培養細胞株の培養上清より,インターロイキン2受容体α鎖誘導物質として分離された分子量13kDの蛋白である.遺伝子クローニングの結果,ADFは,大腸菌から哺乳類に至るまで広く存在する還元酵素チオレドキシン(thioredoxin;TRX)のヒト相同体であることが明らかになっている.ADF/TRXの還元活性部位はアミノ酸配列で-Cys-Gly-Pro-Cys-という2つのシステインを持つことが特徴的であり,典型的には図1に示すように蛋白のジスルフィド結合(-S-S-結合)の還元反応を触媒する.
有酸素呼吸を行う生物は,酸素の還元反応に伴って生じる活性酸素による酸化ストレスに常にさらされている.またこの恒常的に存在する酸化ストレスに加えて,外界に存在する紫外線,X線への曝露,生体内で感染・炎症に伴って食細胞により産生される活性酸素などは局所に存在する細胞に酸化ストレスを与えると考えられる.このような酸化ストレスに対する防御機構として,ラジカルスカベンジャーと呼ばれる活性酸素消去酵素群やグルタチオン,ある種のビタミンなどの抗酸化物質が生体内で機能している.
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