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慢性閉塞性肺疾患(COPD)は発症頻度と死亡率が増加しつつあり,世界的にも大きな健康問題の一つとなっている1).一方,酸化ストレスはオキシダントが生体に及ぼす影響であり,その消去系である抗オキシダント機構(レドックス機構)の相対的機能低下と相まって,様々な疾患の発症や進展過程に関わることが知られている.COPDについても酸化ストレス過剰とレドックス機構の破綻が関与していることを示す根拠が集積しつつある2).COPDの病態は様々な危険因子によって影響され,アルファ1アンチトリプシン欠損や喫煙,気道感染の反復,大気汚染,社会経済的条件,低出生体重,幼少児期の重篤な感染歴などが含まれる3).そのなかで最も確実な危険因子は喫煙であり,COPDにおける酸化ストレスの関与を示唆する知見の多くは気道,肺胞に対する喫煙の影響を検討した内容として把握される.
酸化ストレスとレドックス機構の化学反応について基本的なシェーマを図1に示す4).最初の段階は酸素分子からのスーパーオキシドアニオン(O2・—)の生成である.O2・—はミトコンドリアの電子伝達系やキサンチンオキシダーゼ(XO)反応,アラキドン酸代謝,あるいは貧食細胞におけるNADPH酸化酵素依存性反応などによって生じる.このO2・—は後述するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)によって過酸化水素(H2O2)となり,さらにカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)によってH2OとO2に処理される.しかし,消去できなかった一部のH2O2,やO2・—は2価の鉄原子や銅原子などの遷移金属原子の共存下でハイドロキシラジカル(・OH)を生成する(Fewton反応).またH2O2と塩素分子は好中球由来のミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって代謝され次亜塩素酸(HOCl)を生成する.・OHとHOClは極めて反応性が高く,H2O2はこれら・OHとHOClの前駆物質として重要な意味を持つ.
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