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はじめに
気管支喘息は近年,慢性の気道炎症として認識されている.喘息患者の気道の組織には好酸球,好中球,肥満細胞,リンパ球などの細胞浸潤がみられる1).これらの細胞から様々な炎症惹起性のメディエーターが放出されるが,酸化的ストレスを生じさせる物質,つまり活性酸素種(reactiveoxygen species;ROS)も同時に放出され,気道の傷害—慢性炎症に関与する.炎症細胞で生成されたスーパーオキサイド(O2—)は生理的なpHの条件下では不均化反応により約k=105M−1S−1の速度でO2と過酸化水素(H2O2)に変換される.この反応はスーパーオキサイドディスミターゼ(SOD)の存在下であれば,k=1.9×109M−1S−1の速度で変換される.生成されたH2O2はカタラーゼによりO2とH2Oに分解されるが,例えばO2—が細胞内もしくは細胞膜近傍で大量に生成された場合やSODなどのO2—消去系が相対的に不足した場合はO2—の組織における寿命が延び細胞傷害性にはたらいてくる可能性がある2).また,肺は大気中の様々な汚染物質(オキシダント)と接する機会が多く,生体内で酸素に接する機会の多い臓器でもある.こういった内因性および外因性の過度の酸化ストレスは気道傷害性に作用し喘息の特徴である気道過敏性や慢性の気道炎症を形成すると思われる.一方,酸化ストレスに対して肺は,様々な抗酸化因子を有しており,酸化ストレスと抗酸化因子の間で酸化還元反応(レドックス反応)を介して生体の恒常性を保っている.
本稿では喘息と酸化ストレス,それに対する生体内の抗酸化システム,気管支喘息とレドックスにおける最近の話題について述べる.
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