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はじめに
エンドセリン(endothelin;ET)は1988年,ブタ血管内皮細胞の培養上清から血管収縮活性を指標として単離精製されたペプチドである1).ETは21残基のアミノ酸より構成され,その前駆体であるビッグエンドセリンからET変換酵素(ECE1α,ECE1β,ECE2が同定されている2〜4))によって切り出されること,およびET—1・ET−2・ET−3の異なる遺伝子ファミリーを形成すること5),異なったリガンド親和性を有する7回膜貫通型の2種類のG蛋白共役受容体(ETA受容体6):親和性はET−1≧ET−2≫ET−3,ETB受容体7):ET−1=ET−2=ET−3)が存在することなどが,これまでに明らかにされている8〜10).ET−1は,血管内皮細胞のみならず心筋細胞においても産生され11),血管収縮作用1)や血管平滑筋増殖作用12)といった血管に対する作用とともに,心筋肥大作用13,14)・陽性変時変力作用15,16)・心筋傷害作用17,18)といった心筋に対する作用も有する.
ETのin vitroおよびin vivoにおける生理作用について,生理・薬理学的および分子生物学的手法などを用いた検討から,ETは全身の諸臓器の種々の細胞にオートクライン・パラクラインとして働き,多彩な生物活性を有することが明らかにされた8〜10).その解析においては,各製薬会社によって開発されたET受容体遮断薬が使用され,現在では疾患モデルの病態生理の解析において欠かせないツールとなっている19,20).ET受容体遮断薬は,ペプチド性のBQ−123が1992年に初めて発表されてから21),現在までに経口可能な非ペプチド性のものが開発されている(表1).種類としては,ETA受容体およびETB受容体のそれぞれを選択的に遮断するタイプとETA/B両受容体を非選択的に遮断するタイプがある.また,受容体遮断薬とは別に,ET変換酵素阻害薬の開発も行われてきている.
本稿では,心不全におけるETの病態生理的役割について述べ,ET受容体遮断薬が新しいメカニズムを持つ心不全治療薬として使用される可能性について論じたい.
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