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特集 慢性心不全治療の新しい可能性を探る
心血管病態形成とアンジオテンシンII—アンジオテンシンAT1受容体拮抗薬とACE阻害薬の臨床病態に応じた使い分け
New Aspect of Angiotensin II Receptor-mediated Cardiovascular Action
松原 弘明
1
,
森 泰清
1
,
正木 浩哉
1
,
岩坂 壽二
1
Hiroaki Matsubara
1
,
Yasukiyo Mori
1
,
Hiroya Masaki
1
,
Toshiji Iwasaka
1
1関西医科大学第二内科
1Second Department of Internal Medicine, Kansai Medical University
pp.41-48
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901828
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組織レニン—アンジオテンシン系の役割 循環血液中のアンジオテンシン(Ang)IIが全身の循環調節,水・電解質代謝に重要であるのに対し,心臓や血管,腎臓,副腎,脳などにもレニン—アンジオテンシン(RA)系の構成要素が存在し,組織Ang II産生系として機能している.局所で産生されたAng IIは特異的受容体に結合し,オートクリン・パラクリン作用で局所組織にて細胞増殖作用を発揮し,組織再構築や動脈硬化,再狭窄といった局所機能に深く影響することが注目されている1).この細胞増殖作用を持った組織RA系の存在が最近の循環器領域でのAng IIの重要性の基盤となっている.
大規模介入試験によりACE阻害薬によるAng II産生抑制が心不全や再発性心筋梗塞の予防に,いかに効果的であるかが報告され,基礎疾患が虚血性,非虚血性のいずれにおいても心不全の発症・進行を抑制することが証明された2〜4).現在は豊富な臨床・基礎データの蓄積により,心肥大・心筋梗塞・心筋症・血管内膜傷害などの心血管再構築を伴う病態においてはACE阻害薬によりAng II産生を抑制することが第一選択治療となってきている.心不全急性期には循環血液中のAng II産生系は活性化され5),代償期には正常域に復帰するが,心筋内Ang II系は両時期を通じて活性化され,心拡張や再構築形成に深く関与する3,4).この組織Ang II産生系の存在は,オートクリン・パラクリン効果を発揮して全身の局所機能にも影響を与えている(表1).
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