Japanese
English
特集 エンドセリン研究の新展開
エンドセリンと肺高血圧
Endothelin and Pulmonary Hypertension
宮内 卓
1
,
酒井 俊
1
,
杉下 靖郎
1
Takashi Miyauchi
1
,
Satoshi Sakai
1
,
Yasuro Sugishita
1
1筑波大学臨床医学系循環器内科
1Cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba
pp.1033-1038
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901345
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
エンドセリン(endothelin;ET)は1988年,ブタ血管内皮細胞の培養上清から血管収縮活性を指標として単離精製されたペプチドである1).ETは21残基のアミノ酸より構成され,その前駆体からET変換酵素によって切り出されること,およびET−1・ET−2・ET−3の異なる遺伝子ファミリーを形成すること,異なったリガンド親和性を有するG蛋白連関型受容体(ETA受容体・ETB受容体)が存在することなどが明らかにされている2,3).ETのin vitro・in vivoにおける生理作用について,生理・薬理学的および分子生物学的手法などを用いた検討から多彩な作用が明らかにされてきた2,3).心血管組織におつて主に発現しているのはET−1であり,本稿ではET−1と肺高血圧との関連について述べる.
生体内におけるET−1の組織レベルは諸臓器の中では肺が最も高値であり4),肺は生体内では最も多くET−1を産生する臓器であるといえる.肺では,血管内皮細胞をはじめとして気管上皮や肺胞マクロファージなど,様々な細胞成分がET−1の産生に関与している3,5).血管に対してET−1は強力な血管収縮作用をもつほかに血管平滑筋増殖作用をもつ2,3).また,気道上皮から分泌されるET−1は気管収縮に関与している可能性が議論されている5).さらに炎症と関係することも示唆されている6).また,肺はET−1のクリアランス臓器でもある7,8).一方ET−1は,強力な心肥大作用を有する.肺高血圧は右心室に圧負荷による肥大心を発症させるため,これらの心臓におけるET−1の役割についても興味が持たれるところである.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.