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■最近の動向 カルシウム拮抗薬は,血管拡張作用(後負荷軽減),冠攣縮予防作用,虚血心筋保護作用(梗塞巣salvage),左室拡張能改善作用,抗動脈硬化作用などを有し,慢性心不全に対しても有効であろうと期待される.しかし,欧米で実施された急性心筋梗塞後のカルシウム拮抗薬長期投与の臨床試験では,ニフェジピン(TRENT:1986, SPRINT:1988),ジルチアゼム(MDPIT:1988),ベラバミル(DAVIT-II:1990),いずれにおいても長期予後に対する有用性は証明されず,むしろ心不全合併例では逆に死亡率悪化が報告された.Furbergら(Circulation, 1995)はmeta-analysisにより,虚血性心疾患においてニフェジピン80mg/日以上使用の群では,対象群に比べ死亡率が2.83倍に増加していることを示し,臨床の現場に大きな衝撃を与えた.慢性心不全症例では,Magorianら(Circulation, 1984)がニフェジピンの急性効果として,安静時および運動負荷時の血行動態と心筋酸素需要供給バランスの改善をもたらすことを報告した.しかし,Elkayamら(1990)はdouble-blind cross over studyにより,ニフェジピン長期投与とISDNおよびISDNとの併用を比較検討し,むしろニフェジピンが心不全の悪化をもたらすことを示した.これら従来の短時間作用型カルシウム拮抗薬に対して,近年上市された長時間作用型の薬剤は,問題とされる反射性の神経体液性因子活性化がない(少ない)とされ(抗酸化作用などの報告もあり),慢性心不全治療におけるアムロジピン,フェロジピン,ニソルジピンなどの有用性が期待され,臨床試験が進められている.一方では,上記の評価とは別に,カルシウムアゴニストの有効性を示す実験成績(強心作用,昇圧作用)から,その臨床応用の可能性についても検討され始めている.
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