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はじめに
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmo—nary disease:COPD)は長い経過中にしばしば急性増悪を起こす1).米国ではCOPDの急性増悪による医療費の急増が最近問題となっており,1993年度,急性増悪による入院は年間46万件に達した.1990年には43万6千件であったことから実に年間平均8,000件の増加がみられたことになる.最近の成績ではPaCO2が50 Torr以上のCOPDの急性増悪症例の6カ月目,12カ月目の死亡率は各々33%,42%であった2).このようにCOPDの急性増悪は死亡率の高さと同時に医療経済のうえで大きな問題となってきている.
COPDは米国では死因の第4位であり総数は1991年,85,544人であった3).一方,本邦で死因の第4位は肺炎であり,COPDは10大死亡原因のなかにも入っていない.肺炎で死亡した症例のかなりがCOPDの急性増悪によるものと推定される理由である.
気管支喘息の重積発作と異なりCOPDの“急性増悪”には明確な定義がない.臨床症状は多彩で,特徴的なもの,非特異的なものが混在している.後者にはは全身倦怠感,不眠,睡眠障害,疲労感,うつ傾向などがあろ,また比較的,特徴的な症状では呼吸困難感の増悪,膿性痰を伴う咳,発熱,下肢の浮腫,意識障害などが挙げられる.急性増悪までの病歴,身体所見,薬物による治療内容が判明している場合には治療方針が立てやすい.しかし,これらの情報が欠如していたり,不十分である場合には気管内挿管,人工呼吸器装着などの侵襲度の高い治療法が早期に選択される可能性がある.高齢者COPDでterminal stageに対する侵襲度の高い治療法については,リビングウィルをあらかじめ書面で準備させることによるDNR(do-not-resuscitate order)など医療倫理にも十分な配慮がなされるべきである.
COPDの急性増悪が疑われる場合には,テオフィリン薬,抗菌薬,鎮静薬などの治療薬が不適切に投与された結果によるものではないかの確認が必要であり,次いで一般病棟での治療が適切であるか,RCU,CCUなど救急救命的な治療が必要であるかを判断しなければならない.特に吸入療法の実施が困難であったり,バイタル・サインの障害がある場合にはRCU,CCUでの治療が望ましい.
このようにCOPDの急性増悪に関しては極めて多岐にわたる問題点が山積しているのが現状である.本稿では紙面の都合上,COPDの急性増悪の際の基本的な治療方針の最近の動向について考察を加えたい.
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