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はじめに
気管支喘息の病態については,研究とともにその概念が変化してきた.古くは,喘息発作を主徴とした病態,すなわち気管支平滑筋の収縮を中心とした機能的,可逆性疾患であるとされ,この気管支平滑筋の収縮,浮腫,分泌増加の誘因として,肥満細胞とIgEの反応により遊離される活性物質が中心的役割を果たしていると考えられた.次いで,喘息発作により死亡した患者の剖検,加えて喀痰検査,気管支鏡を使用した気管支洗浄液,気管支組織の検討がなされるにつれ,喘息は気道の炎症性疾患であることが明らかにされた.特に,好酸球浸潤と好酸球由来の組織傷害作用を持つ活性物質による気道上皮の剥離を特徴とした“慢性気道上皮剥離性好酸球性気管支炎”が喘息の本態であると表現されるようになった.さらに,Tリンパ球,特にTh2細胞が中心となりサイトカインネットワークを介して形成される“様々の炎症細胞が密接に相互作用した結果としての気道の慢性炎症”であることが明らかにされ,気道の非可逆性変化(リモデリング)も病状の悪化に関与していることが示唆されてきた.実際に喘息患者の気管支局所にはは活性化した好酸球,リンパ球,肥満細胞,好塩基球,さらに,好中球の浸潤も認められる1,2).好中球については気道局所への浸潤が喘息患者に認められるとの報告は多い.しかし,好中球が気管支喘息の病態に密接に関与しているかどうかについては,いくつかの異なる報告がある.
慢性の肺疾患において,感染症疾患以外で炎症局所に好中球の浸潤が増加しているものは,慢性気管支炎,慢性肺気腫,汎細気管支炎,肺線維症,膠原病肺,ARDS(acute respiratory dis—tress syndrome)そして気管支喘息があげられる.これらの疾患では,喀痰中,気管支肺胞洗浄液中に好中球走化性因子の検出とともに好中球の気道局所での増加が報告され,好中球の持つ酵素,スーパーオキサイドが疾患の形成に関与しているとの報告がされている.しかし,気管支喘息においては,抗原チャレンジテストにおいて必ずしも気道の好中球の増加が得られない3,4)などの理由により,喘息の本態との関係は重要視されない傾向にあった.
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