Japanese
English
特集 心肺疾患における抗血栓療法
急性肺塞栓症の抗呈血栓療法と再発予防
Antithrombtic Therapy for Pulmonary Thromboembolism:Primary treatment and secondary prevention
平岡 直人
1
,
中野 超
1
Naoto Hiraoka
1
,
Takeshi Nakano
1
1三重大学医学部第一内科
1Department of Internal Medicine I ,Faculty of Medicine, Mie University
pp.765-772
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901740
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はじめに
急性肺塞栓症(APE)とは,なんらかの塞栓子が肺動脈に捕捉されることにより,急激な肺循環障害を引き起こし,その結果,呼吸困難やショックなどの急性肺性心の病態を呈する疾患である.本症は,ほとんどが下肢の深部静脈血栓症(DVT)を原因とする血栓塞栓症であり,抗血栓療法が治療の基本となる.
APEに対する抗血栓療法には,ヘパリンやワーファリンなどによる抗凝固療法と,ウロキナーゼや組織プラスミノゲンアクチベータ(tissueplaslninogen activator:t-PA)などによる線溶療法がある.抗凝固療法は確立された治療で,多くのAPEは抗凝固療法のみで予後は改善される.一方,線溶療法は積極的に血栓を消失せしめる合理的な治療であるにもかかわらず,予後を改善したという無作為試験の報告がなく,適応や方法にも一定したものがない.
対象となるAPEそのものの病態も多彩で,ともすれば見逃されかねないような軽症例から,診断や治療の時間的余裕のない突然死に至る超重症例まであり,さらに患者背景も様々である.そのため,個々の症例に応じた最良の治療戦略をとることが要求される1,2).
また,APEは診断が困難で治療費も高いばかりでなく,治療抵抗性であるものも少なくない3).そのため,発症予防が重要となる.
以上のような観点に立ち,この項でははAPEに対する抗凝固療法および線溶療法を中心に,具体的な解説をするとともに,APEの治療戦略についても私見を交えて述べる.
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