Topics Respiration & Circulation
肺線維症へのアポトーシスの関与
大田 健
1
1帝京大学医学部内科
pp.723-724
発行日 1998年7月15日
Published Date 1998/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901733
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■最近の動向 アポトーシス(apoptosis)は,1972年Kerrらにより提唱された名称で生理的な細胞死であり,新たな遺伝子発現を伴うことから,遺伝子にプログラムされた細胞死(programmed cell death)として表現される.アポトーシスの重要な特徴は,死細胞の細胞質および核質が細胞膜に保持された状態で小粒状となり,しかも極めて短時間に処理されることであり,組織の炎症反応を惹起することなく静かに死細胞が消滅する点にある.呼吸器疾患は,組織の炎症反応を主体とする炎症性疾患と細胞の増殖反応を主体とする腫瘍性疾患に大別できる.しかし,いずれの疾患群においても,細胞の寿命の延長や短縮が細胞レベルで調節され,種々の病態を発現していると考えられる.すなわち,ある病態では,ある細胞においてアポトーシスが抑制されて寿命の延長が起こり,別の場合にはアポトーシスが誘導されて寿命の短縮が起こるのである.このような,アポトーシスをめぐる細胞レベルでの調節が,間質性肺炎・肺線維症においてどのように行われているかについての研究は,アポトーシスの研究用試薬の商品化に伴い活発に行われるようになった.しかしまだ歴史は浅く,アポトーシスが肺線維症の病態にどのように関与しているかを結論付けるには,十分な量の論文が出ていないのが現状である.
本稿では,肺線維症におけるアポトーシスの位置付けを示唆すると思われる論文3編を取り上げ,とくに肺線維症においてアポトーシスは善玉か悪玉かということも含めて,私見を交えて概説する.
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