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■最近の動向 心筋細胞のアポトーシスが虚血再灌流時にもみられることが報告され,心筋の細胞死にはnecrosisのみでなくアポトーシスが関与しおり,そのメカニズムや病態生理学的意義についての検討が始まったばかりである.アポトーシスを起こす因子にはFas-Fas ligandシステムや各種サイトカイン,カルシウム流入促進薬,活性酸素など種々の因子が知られている.これらのうちFas-Fas ligandを介したアポトーシスはインターロイキン1β変換酵素の活性化を介して核内のエンドヌクレアーゼの活性化,DNAのヌクレオソーム単位の断片化を起こすことが報告されている.しかし,このメカニズムの各ステップ間の詳細なメカニズムについてはほとんど不明であり,現在精力的な研究が行われているところである.
アポトーシスを促進する因子として腫瘍抑制遺伝子として知られているp53がある.また,アポトーシスを抑制する因子としてBcl−2がよく知られている.Bcl−2のアポトーシス抑制メカニズムについては現在のところ不明であるが,インターロイキン1β変換酵素の上流で抑制的に作用していると考えられている.類似の作用を有するBcl-xや逆に促進的に作用するBaxもみつかっている.虚血再灌流時には活性酸素によってアポトーシスが起こり得るが,活性酸素が生じない条件下でもアポトーシスは誘導され,そのメカニズムが注目されている.また,圧負荷肥大心や拡張型心筋症においてもアポートシスは認められ,心筋のリモデリングや不全心への移行に対する役割が注目されている.さらに,血管系においてもアポートシスは認められ,血管のリモデリングや血管内膜肥厚において重要な役割をはたしていることが明らかにされつつある.
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