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はじめに
アポトーシスの役割の一つは,炎症細胞など不必要になった細胞を有害な代謝産物を細胞外に放出させることなく排除することである.この機構が破綻すれば炎症が遷延することになる.実際に肺損傷の正常な修復には,集簇した炎症細胞や増殖した線維芽細胞がアポトーシスによって肺胞壁や肺胞腔から除去されることが不可欠である1).またその反対に,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)2),特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)3,4)においては,肺上皮細胞の過剰なアポトーシスが病態と関連している.
肺線維症は,原因を問わず肺上皮・血管内皮細胞の損傷に引き続いて起こる.上皮傷害の程度が軽度であれば正常に修復されるが,凌駕するようであればリモデリングの結果,非可逆的な線維化に至る.すなわち,外界とのバリア役の主役を演じる肺上皮細胞とその他の線維芽細胞に代表される間葉系細胞のバランスが非常に重要であり,アポトーシスはこれらの細胞の数調節にとって必須機構である.したがって,アポトーシスの機構を制御することが重要と考えられる.
アポトーシスの経路は,大きく2つに分けられる.1つはdeath receptorを介する経路であり,ligandと結合するとcaspase-8が活性化される.もう一つは,薬剤,放射線,活性酸素などによって引き起こされるmitochondriaを介する経路である.刺激によってmitochondriaからcytochromecが細胞質内に放出されると,Apaf1,ATPと複合体を形成し,caspase-9を活性化する.活性化されたcaspase-8とcaspase-9はcaspase cascadeを活性化し,最終的にcaspase-3によってアポトーシスが実行される.最近,第3の経路として小胞体を介するアポトーシスが注目されている.
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