Topics Respiration & Circulation
心筋細胞の分化と増殖
小室 一成
1
1東京大学医学部循環器内科
pp.725-726
発行日 1998年7月15日
Published Date 1998/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901734
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■最近の動向 最近,癌や脳の領域を含め,あらゆる分野の研究において“発生・分化”がキーワードとなっている.それは,分子生物学,発生生物学の進歩により,今までは解析が困難であった発生・分化という難題も分子レベルで理解できるようになったためである.発生分化過程において機能している分子はいずれも大変重要であり,それは胎生期に臓器が形成されるときばかりでなく,成人後各々の臓器が特殊に分化した状態を維持する上においても重要であると考えられる.したがって,その分子の異常は疾病につながり,また逆にこのような分子を使うことにより疾病を治療することもできる可能性がある.1987年MyoDという骨格筋特異的な転子因子の発見に始まる骨格筋分化の研究の急激な進展に伴い,それより数年遅れて心筋における発生・分化の研究が始まった.心筋細胞肥大誘導因子として単離されたカルディオトロフィン1が心筋の発生に重要であったり,逆に発生・分化に重要であると考えられたGATA 4という転子因子が心筋肥大に重要であることなど多くの興味深い知見が得られてきている.1997年米国では,心不全克服のための研究課題として心筋細胞分化の研究を挙げている.今後,心筋細胞の分化の機序を明らかにしていく過程において新しい分子が次々と発見されることであろうし,さらにこれらは病態の解明にも結びつくことが期待される.
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