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特集 呼吸器疾患におけるアポトーシスの最新知見
急性肺損傷におけるアポトーシス
Apoptosis in Acute Lung Injury
中村 守男
1
,
石坂 彰敏
2
Morio Nakamura
1
,
Akitoshi Ishizaka
2
1永寿総合病院呼吸器科
2慶應義塾大学医学部呼吸器内科
1Division of Pulmonary Medicine, Eijyu General Hospital
2Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.35-42
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100140
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はじめに
急性肺損傷(acute lung injury:ALI)は,肺微小血管に接着し,肺胞腔内へ浸潤した好中球が惹起する炎症により招来される.肺胞上皮・上皮基底膜のみならず肺微小血管内皮細胞の構築が破壊され,微小血管と上皮の透過性亢進の結果,発生する病態である1).そのため,治療も活性化好中球の微小血管への接着や肺胞腔内への遊走を抑制することに主眼が置かれてきた.しかし,ステロイドの大量投与や種々の好中球遊走のmediatorに対する拮抗薬は,ALIモデルの動物実験で有効性に関する報告は多々あるものの,臨床的な有用性を認めるに至っていない.
近年,様々な臨床および基礎的検討から,ALIのメカニズムとしてアポトーシス(apoptosis)経路について興味深い知見の数々が得られている.さらに,肺損傷の急性期後に継続して生じる肺の線維化も,損傷の修復(repair)過程で上皮細胞・炎症細胞や間葉細胞の均衡の破綻から,正常な修復が妨げられた結果と考えられ,この過程にもapoptosisが関与している可能性が検討されている.ALIからそのrepairの経過においては,当然単一のメカニズムではなく多様な要因の関与が想定されるが,apoptosisはそのなかでも重要な役割を担うものと考えられる2~4).
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