Topics Respiration & Circulation
エストロゲンと虚血性心疾患
佐久間 一郎
1
,
北畠 顕
1
1北海道大学医学部循環器内科
pp.523-524
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901487
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■最近の動向 虚血性疾患が死因の第一位である欧米では,1995年のアメリカ心臓病学会虚血性心疾患予防ガイドラインで『すべての更年期以降の女性にエストロゲン投与を考慮すべき』との勧告が出されたこともあり,更年期以降の女性に対するホルモン補充療法が頻繁に行われている.エストロゲン投与は虚血性心疾患発症を半減させるが,その機序として第一に血中脂質プロファイル改善(LDL-コレステロールの低下,HDL-コレステロールの増加)が考えられる.しかし疫学データから,脂質改善はエストロゲンの虚血性心疾患発症予防効果の約25%に関与するのみとされ,他の機序としてエストロゲンの内皮細胞型NO合成酵素誘導作用によるNO生成亢進,カルシウムチャネル拮抗作用,抗酸化作用などが想定されてきた.最近では,カリウムチャネル開口作用,エンドセリン受容体拮抗作用,各種サイトカインに対する作用などの関与が報告されている.長期に及ぶホルモン補充療法に際し,子宮内膜癌発症防止の観点から,子宮残存者へはプロゲステロン併用が必須となることがPEPI Studyにより明らかとなった.プロゲステロン併用はエストロゲンの効果に一部拮抗するが(HDL—コレステロール上昇の減少など),臨床効果はエストロゲン単独と遜色ないとされている.しかし,乳癌発症促進の有無,骨粗鬆症への効果を含めた臨床的有用性の確立には無作為大規模臨床試験が不可欠であり,現在米国で虚血性心疾患の二次予防試験としてHERS(1998年に終了),一次予防試験としてWHI(2005年に終了)が進行中である.
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