Japanese
English
特集 性差と精神医学—なぜ頻度や重症度に差があるのか
精神疾患とエストロゲン
The Relationship between Mental Illness and Estrogen
菊山 裕貴
1,2
,
西田 圭一郎
1
,
金沢 徹文
1
Hiroki Kikuyama
1,2
,
Keiichiro Nishida
1
,
Tetsufumi Kanazawa
1
1大阪医科薬科大学神経精神医学教室
2大阪精神医学研究所新阿武山病院
1Department of Neuropsychiatry, Osaka Medical and Pharmaceutical University, Osaka, Japan
2Osaka Psychiatric Institute, Shin-Abuyama Hospital
キーワード:
エストロゲン
,
estrogen
,
うつ病
,
depression
,
ビスフェノール類
,
bisphenols
,
自己免疫疾患
,
autoimmune disease
,
非定型精神病
,
atypical psychosis
Keyword:
エストロゲン
,
estrogen
,
うつ病
,
depression
,
ビスフェノール類
,
bisphenols
,
自己免疫疾患
,
autoimmune disease
,
非定型精神病
,
atypical psychosis
pp.37-43
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207168
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抄録
若年女性のうつ病はエストロゲンが扁桃体と視床下部に存在するエストロゲン受容体α(ERα)に結合して恐怖や不安を惹起することが関係し,更年期以降の女性のうつ病はセロトニン神経細胞体が存在する縫線核においてERβへのエストロゲン結合が減少し,ERβによるセロトニン合成酵素のトリプトファンヒドロキシラーゼの転写が抑制され,セロトニン合成が減少することが関与する。
プラスチックの原料であるビスフェノール類は内分泌撹乱作用があり,ビスフェノールAFはERαの刺激作用,ERβの拮抗作用を持ち,うつ病を引き起こしうる。近年のうつ病の増加はそのような環境汚染,つまり公害が関与している可能性もある。
エストロゲンはB細胞に作用し,IgG・IgM抗体の産生を増加させるため,自己免疫疾患は女性に多い。非定型精神病の病態生理の一部には自己免疫疾患との共通点が存在することが想定されており,そのため,非定型精神病は女性に多い精神疾患となる。
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