Japanese
English
Current Opinion
虚血性心疾患の一次予防—新しいガイドラインをふまえて
Primary Prevention of Ischemic Heart Disease in Japan:According to the new guideline
佐久間 一郎
1
,
北畠 顕
1
Ichiro Sakuma
1
,
Akira Kitabatake
1
1北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学
1Department of Cardiovascular Medicine, Hokkaido University Graduate School of Medicine
pp.727-734
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902506
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
虚血性心疾患の一次予防をめぐる最近1年間の話題
わが国の虚血性心疾患による死亡率は先進国のなかで最も低く,現在米国の5分の1,英国の8分の1ほどである.したがって,虚血性心疾患が死因の第1位である欧米と異なり,日本人の死因の第1位は悪性新生物であり,第2位が心疾患,そして第3位は脳血管障害となっている1).しかし,第2位の心臓病のなかの虚血性心疾患,および第3位の脳血管障害のなかでも最近増加が顕著である脳梗塞,いわゆる動脈硬化性疾患を併せると,癌を抜いて死因の第1位となる.今後わが国では全人口に占める高齢者の割合がますます増加し,2020年には4人に1人が,2050年には3人に1人が老人という超高齢社会になると予想されている2).動脈硬化性疾患が年齢とともに進行することを考慮した場合,虚血性心疾患を筆頭とする動脈硬化性疾患の予防は,日本人が健やかな老後を送るため,さらに国民医療費の増加を抑制するために非常に重要となると思われる.
動脈硬化性疾患,なかでも虚血性心疾患である狭心症や心筋梗塞などは,生活習慣がその発症に強く関与する「生活習慣病」である.したがって,日頃から生活習慣に注意を払うことにより,その発症を抑制することが可能である.食事に魚や豆腐を多く摂り,肥満の少なかったわが国は,世界の中でも虚血性心疾患の最も少ない国の地位を甘受してきた.しかし,食事の西欧化により肉や卵を多く摂り,また車の普及や家事の軽減で運動不足が増えた最近では,肥満や糖尿病,高血圧症といった「生活習慣病」が増え,それとともに虚血性心疾患の発症も増加しつつある.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.