Japanese
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綜説
ATP感受性K+チャネルと虚血・再灌流不整脈
Potential Role of ATP-Sensitive K+Channels in Ischemia-and Reperfusion-Induced Arrhythmias
中谷 晴昭
1
Haruaki Nakaya
1
1千葉大学医学部薬理学
1Department of Pharmacology, School of Medicine, Chiba University
pp.512-520
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900676
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はじめに
1950年代より,低酸素,代謝阻害薬により心筋の活動電位幅が短縮するという現象は知られていたが,そのイオン機序は十分に明らかとはなっていなかった1,2).1983年,Noma3)により,心筋細胞において細胞内ATPが減少した時に開口するイオンチャネル,すなわちATP感受性K+チャネルが存在することが明らかにされ,低酸素,代謝阻害時に活性化するイオンチャネルとして注目されるようになった.その後,ATP感受性K+チャネルは骨格筋細胞4),膵臓ランゲルハンス島β細胞5),神経細胞6),血管平滑筋細胞7)にも見出され,これらの細胞系での生理学的意義が注目されている.特に膵臓β細胞ではその生理的機能が最も明らかとなっている.すなわち,血中グルコースの上昇によって細胞内ATPが増加し,その結果このチャネルが閉じることによって膜の脱分極,Ca++チャネルを通ってのCa++流入が起こり,最終的にインスリンが分泌されると考えられている.Glibenclamide,tolbutamideなどのsulfonylurea系の糖尿病治療薬はグルコースと同様に膵臓β細胞のこのATP感受性K+チャネルを抑制し,インスリンを分泌させる8,9).また,これらの薬物は膵臓β細胞のみならず,心筋細胞を含めた他の細胞系においても,ATP感受性K+チャネルを遮断する7,10,11).一方,このATP感受性K+チャネルを開口する薬物も見出された12).
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