Japanese
English
Bedside Teaching
肥大型心筋症へのDDDペースメーカー療法
Dual-chamber Pacing in Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy
宮崎 利久
1
,
伊藤 清治
1
Toshihisa Miyazaki
1
,
Shinji Ito
1
1慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.57-63
発行日 1997年1月15日
Published Date 1997/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901403
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はじめに
肥大型心筋症(HCM)は拡張型心筋症とともに特発性心筋症の代表的な病型であり,その本質は心筋自体の異常による左室の肥大である.HCM患者の約25%に左室流出路の有意な狭窄が認められる1).この肥大閉塞型心筋症(HOCM)患者は左室収縮期圧・拡張期圧の上昇による心筋虚血(狭心発作),左房圧の上昇による呼吸困難を自覚し,流出路閉塞が増強される状況では失神発作を起こすことがある1,2).これらの症状はβ遮断薬3)やverapamil4)に反応することが多いが,薬剤耐性となったり,副作用のために中止せざるを得ないことも少なくない5,6).
内科的治療に抵抗性のHOCM患者に対して,過去30年間種々の外科治療が試みられてきた.代表的なものは心室中隔切除術7〜9)と僧帽弁置換術10,11)である.しかし,前者は適当な容積の心筋を切除することが必ずしも容易ではなく,両者とも死亡率・後遺症発生率が低くないという問題があった7,8,10,11).
そこで近年注目されているのがDDDペースメーカー療法である.生理的ペーシングがHOCM患者の流出路圧較差と自覚症状を軽減することは1970年代から知られていたが12,13),NIHのFananapazirを中心としたグループはDDDペーシングの急性効果と慢性期効果を多数例において証明し,臨床的有用性を示唆した14,15).
本稿ではHOCMの病態とDDDペーシングの急性効果の機転ペースメーカー植え込みの際の注意点,慢性期効果の機転,予後に及ぼす影響などについて解説する.
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