Topics Respiration & Circulation
PTCA後の冠血管再狭窄予防のup-to-date
北風 政史
1
1大阪大学医学部第一内科
pp.769-770
発行日 1996年7月15日
Published Date 1996/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901297
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■最近の動向 PTCAによる血行再建術は,すでに確立された観がある.しかし,未だ再狭窄の問題が解決されていない.種々の薬剤を用いて今まで50以上の臨床試験が行われているが,動物モデルでは有効でも臨床では有用とされた薬剤は一剤もない.これは,ヒトの種特異性,薬剤投与量および投与方法,困難なヒトでの薬効評価によると考えられる.しかし最近,再狭窄の機序が見直され,再狭窄を血管内膜層の過増殖としてとらえるのではなく,PTCAを行った血管のリモデリングとして認識すべきという考えが主流になるつつある.これは,血管内膜層の過増殖を抑制すると考えられる薬剤が臨床で有効でないからである.さらに,バルーンによる血管障害モデルで詳細に検討すると,血管内膜層の増殖の程度は再狭窄の有無によらず比較的一定で,再狭窄の出現を決定しているのは,血管径の変化すなわちリモデリングであるという報告が相次いでいる.血管のリモデリングの機序として,バルーンによる血管障害により血管の壁構造が弱体化し,ずり応力により拡大する,あるいは血管障害時に活性化する蛋白融解酵素による機序など示唆されている.今のところリモデリングの機序は不明であり,薬剤等でどのように修飾すべきかも明らかでない.再狭窄の予防という観点から血管のリモデリングとはなにか検討する必要があろう.
内膜層過増殖抑制のための薬剤投与方法の改善策としては,ローカルデリバリーシステムが注目されている.薬剤を封入したマイクロパーティクルを用いるなどの他に,放射線を発するステントなど新しい試みがなされている.今後はより血管選択性の高い方法が考案されることになると思われる.
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